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最高裁判所第一小法廷 昭和32年(オ)84号 判決 1957年12月26日

主文

原判決を破棄する。

本件を福岡高等裁判所に差し戻す。

理由

職権をもつて調査するに、原審においては、民訴三六三条により準用せられる同二三八条により、本件控訴の取下のあつたものと看做されるべき期間満了の日たる昭和三一年七月二三日までに、上告状において上告人が提出したと主張する書面が順次上告人から原裁判所に提出されていることが認められる。これらの書面は、その文言に徴すれば、いずれも書面による口頭弁論期日指定の申立と認めることができる。(尤も右書面には法定の印紙の貼用がないが、原審は民事訴訟用印紙法一一条但書によつて、相当印紙を貼用せしめ得べき筋合のものであつた。)しかるに原審は、右書面に対し何ら考慮を払うことなくこれを返戻しまん然と、上告人から右昭和三一年七月二三日までに口頭弁諭期日指定の申立のなされた事実を認め難いとなし、結局本訴は民訴二三八条の準用により、右期日の経過とともに控訴の取下げがあつたものと看做されて、既に終了していることが明らかである旨を判示した。しかし、上述のごとく、前記書面が口頭弁論期日指定の申立と認めうるものであり、そしてそれが原審で何ら考慮が払われなかつた本件においては、本件控訴の取下のあつたものと看做さるべき期間が満了したか否かは未だ確定するに至つていないものと認めざるを得ない。この点において、上告状記載の論旨は理由があり、原判決は違法であつて破棄を免れない。

よつて、その余の論旨についての判断を省略し、民訴四〇七条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 入江俊郎 裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 下飯坂潤夫)

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